「金融教育に望むもの」年収による違いが明確に 年収1000万円以上の人が「貯金」よりも重視するのは?


2022年度より、高校の家庭科で「資産形成」の授業が必修化され、話題になりました。これまでの家計(収入と支出)や消費における注意点などに、預貯金や保険、株式、債券、投資信託など金融商品に関する内容が追加されたのです。

そこで株の学校ドットコムでは、高校生の子を持つ親世代は、高校の金融教育にどのような内容を望んでいるのか。世帯年収別で違いがあるのか調査を行いました。

その結果、世帯年収によって望む教育に異なる傾向があることが分かりました。

  • 世帯年収1000万円以上の人は、1000万円未満の人よりも総じて金融教育に関心が高い
  • 世帯年収1000万円以上と1000万円未満とで差が最も大きいのは「生涯設計、ライフプラン」の14.5ポイント
  • 世帯年収800万~1000万円の人は、より年収が低い人よりも金融教育の関心が下がる

世帯年収1000万円以上は総じて金融教育に関心が高い

今回の調査では、『今の高校生にどんな金融教育が必要と思うか』を質問しました。その結果、世帯年収が1000万円以上の回答者は、1000万円未満の回答者よりも、ほとんどの項目において必要性を感じる人の割合が高い傾向がありました。

1000万円未満の方が割合の高かった項目は、「その他」を除くと「借金(奨学金、住宅ローン、消費者金融等)のみです。それ以外の項目では、1000万円以上の回答者の割合が高くなりました。

最も差が大きいのは「生涯設計、ライフプラン」の14.5ポイント

 世帯年収1000万円以上と1000万円未満とで顕著に差が出たのは「生涯設計、ライフプラン」で、14.5ポイントの差でした。世帯年収をより細かく分けたグラフで見ても、1000万円以上だけ他と比べて飛びぬけて高いことが分かります。

「生涯設計、ライフプラン」選んだ理由について、年収1000万円以上の回答者からは「自分のしたい生き方をしていくのに金融は必要な知識だから」「金融商品が世の中にあふれている。これを有効に使って人生設計の知識が必要である」などの回答が得られました。

「生涯設計、ライフプラン」を選んだ理由(世帯年収1000万円以上の回答者)

「自分のしたい生き方をしていくのに金融は必要な知識だから」(49歳・女性)

「日本も欧米と同じように学生時代からお金に関する知識を付けることは、将来、社会人になった際の、借金を抱える人を減らしたり、資産運用のためお金を運用する人を増やせるため」(56歳・男性)

「金融商品が世の中にあふれている。これを有効に使って人生設計の知識が必要である」(67歳・男性)

「若い人に早い段階から自分の資産形成について考えて欲しい」(69歳・女性)

「若いうちから、経済を知りお金に関心を持ち 有意義な仕事に就ける社会人になれそうだから」(46歳・女性)

「日本は金融教育がなされていない、と言われているので、高校時代から知っておくことは必要だと思うから」
(36歳・女性)

他に差の大きかった項目は「資産運用の必要性」が12.5ポイント、「利回り、複利」が11.1ポイントという結果となりました。世帯年収が1000万円以上の人は、「家計管理、生活収支、貯金」よりも「生涯設計、ライフプラン」「資産運用の必要性」を重視しており、世帯年収1000万円未満の回答者とは明確に傾向が異なりました。

これらの結果から、世帯年収が1000万円以上の人は、子どもたちにライフプランを明確にして必要な資産運用に取り組めるようになることを、より強く望んでいると思われます。高校の授業で「資産形成」が必修化されたことについては様々な意見がありますが、年収1000万円以上の人では多くが歓迎している可能性が高いと考えられます。

世帯年収800万~1000万円では関心が下がる

世帯年収1000万円以上の人が、1000万円未満の人よりも金融教育への関心が高いことが分かりましたが、世帯年収に比例して関心が高まるのかというと、そうではないようです。世帯年収が800万〜1000万円では、他のどんな年収層よりも関心が下がる項目が多数ありました。

「世帯年収800万円~1000万円」の回答者の職業を見てみると、他の年収層と比べて、2つの特徴があることが分かりました。1つは、契約社員も含めた「会社員」の割合が53%で、他よりも高くなっています(全体では41%)。もう1つは、専業主婦の割合が22%で、こちらも他の世帯年収よりも高い数値です(全体では16%)。

2019年に厚生労働省が実施した「国民生活基礎調査」によると、日本の1世帯あたりの所得金額の中央値は437万円でした。世帯年収800万円~1000万円の回答者は、比較的裕福な会社員とその家族が多いと考えられます。

これらの世帯で金融教育への関心が低いのは、投資や生涯設計よりも、「会社員として成功するにはどうすれば良いか?」「より高い給料を得るにはどうすれば良いか?」といった点を重要視する傾向があるからではないかと推測されます。

「年収1000万円」の壁を突き破るために

多くの人が「得たい年収」としてあげる「1000万円」。今回の調査結果から見えてきたのは、その壁を突破する人とそうでない人の違いの1つとして、投資や金融への関心の向け方があるのかもしれない、ということでした。

「株式トレードの考えが身に付いたことで、不思議と仕事もうまくいくようになった」。実は株の学校ドットコムでは、受講生の方々からこんな報告を受けることが少なくありません。トレードにおけるリスク管理の考え方や、不条理で理不尽な相場に対する心構え、確率で考えるスキルが身に付くことなどによるものだと考えられます。

投資と同じく、どんなビジネスにもリスクがつきものです。「リスクコントロール」や多くの「想定外」にどう対応するかという学びは、あらゆる場面で活用できる実践的な武器になります。

株の学校ドットコムでは、単にお金を増やすことを目的とするのではなく、「株を通して、より良い人生を得るための考え方」を身に付けていただくべく、これからも個人投資家・トレーダーのみなさまに、株式投資にまつわる本質的な学びを提供してまいります。

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