プロトレーダーの注目株 2022年12月編
あの含み益はどこへ… 実質利上げにてんやわんやの相場でプロが学んだこととは
日々相場と向き合うプロトレーダーは、いまどんな銘柄に注目しているのか?
講師の窪田剛が、3つのランキングから12月相場を振り返ります。
12月相場を振り返って
まじかよ! 日銀!!
日銀が突然の実質利上げ(長期金利の目標上限の引き上げ)。いやぁ、衝撃でした。アベノミクスの異次元緩和が10年続いていましたが、その金融緩和が突然の終りを迎えました。本当に突然、日銀が方針を転換し、一気に円高が進み、株安になってしまいました。
しかも日銀の発表が12月20日の昼休み。その日の午後は、全トレーダーがてんやわんやだったはずです。
私ですか? 私も、持っている株をほぼ全てぶん投げました。あんなにあった含み益はどこへ……。このお正月は質素に慎ましく過ごそうと思います。甥っ子たちよ、すまん。お年玉減っちゃった。ぐすん。
12月相場で上がった株・下がった株
そんな2022年12月の株式相場を売買代金と値上がり率・値下がり率のランキングで振り返ってみたいと思います(太字はピックアップ銘柄/データ提供:CMBトレード塾)。
・2022年12月の売買代金トップ20
・2022年12月の値上がり率トップ20
・2022年12月の値下がり率トップ20
12月相場でプロが気になった銘柄
このランキングの中から、私・窪田が気になった銘柄をピックアップします。
・売買代金ランキング
【第1位】レーザーテック<6920>……6.21兆円
これ、東証の売買のほぼ全てがレーザーテックの売買だった、といってもいいくらいの規模です。東証プライムの12月の売買代金は全体で65兆円だったので、約10%がたった1銘柄で賄われているのです。
ただし、「半導体に注目です!」という意味ではありません。「やることがないから、とりあえずレーザーテック」というような消極的な理由で売買されていたんだと思います。
ちなみに、2位の三菱UFJの売買代金が1.5兆円だったので、その5倍も売買されていたということ。驚きです。レーザーテックの無双状態はいつまで続くのか。注目です。
【第2位】三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>……1.55兆円
【第6位】三井住友フィナンシャルグループ<8316>……………1兆円
【第16位】みずほフィナンシャルグループ<8411>…………4284億円
20日に日銀の実質利上げ報道があり、にわかに銀行に注目が集まりました。金利上昇による収益拡大期待が先行した形になります。
もちろん、プラス材料ばかりではないので注意が必要ではあるのですが、2023年はメガバンクだけでなく地銀も含めた銀行株に注目が集まる場面が増えるかもしれません。要チェックのセクターです。
・値上がり率ランキング
【第6位】住石ホールディングス<1514>……+54.7%(254円→393円)
元芸人で著名投資家の井村俊哉氏銘柄。2022年に大きく注目された投資家で、日銀の利上げがあったにもかかわらず大きく資産を伸ばしたようです。いやぁすごい。ピックアップせざるをえない。2023年も彼の動向からは目が離せません。
ただし、何度も言いますが、彼と同じ銘柄をただ買えばいいってわけではありません。彼があなたの投資を保証してくれるわけではない。
彼がすごいのは誰もが認めるところですが、あなたが投資するときはしっかりとあなた自身で分析して、あなた自身で決断して、あなた自身の責任で投資をするようにしてください。それが、全員が長期的にハッピーでいられる方法です。
・値下がり率ランキング
【第1位】日医工<4541>……-59.5%(205円→83円)
先月も値下がり率1位の日医工。2023年春頃の上場廃止は決まっているものの、相変わらずマネーゲーム的に売買されています。この銘柄は完全にマネーゲームです。近づかないようにしましょう。
では、なぜピックアップするのか。こういう銘柄は良くも悪くもいつの時代も注目されるのです。私も最初の頃、「マイカル」という破綻銘柄で訳もわからずマネーゲームに参加していました。もちろん損失を出して終わったのですが、まだ学生だったため損失額は小さくてすみました。
きっとこういう株って誰もが通る道なんだと思います。通らなくていいのに。だから、あえてピックアップをして注意喚起をしておきます。「臭いものに蓋」のように見ないふりをするのではなく、しっかりと状況を追いかけて、見届けたいと思っています。
くどいですが大事なことなので言っておきますが、決して売買しないようにしてください。
【第4位】ANYCOLOR<5032>………-43.5%(10,460円→5,900円)
【第14位】マイクロ波化学<9227>……-33.0%(2,610円→1,747円)
直近のIPOロックアップ解除による受給悪化で下落した2銘柄です。どちらも上場してから大きく値上がりして、この12月にロックアップ解除を迎えました。ロックアップとは、上場前からの株主が上場後の一定期間はマーケットで持ち株を売却できないようにする制度です。
なぜこの2銘柄のロックアップ解除が騒がれたのかというと、公開後大きく値上がったために上場前の株主は売りたい気持ちが強い。売りたくてしょうがない。大株主の売りたい気持ちが強くて受給が悪化するなら、そりゃ下がる、というメカニズムです。
もちろん、他のIPO銘柄だって同じなのですが、ここまで大きく値上がりする銘柄は珍しく、しかも同じ時期にロックアップ解除を迎えたということでピックアップ。今後、IPO後に大きく値上がった銘柄を売買するときには、この2銘柄を思い出してください。気をつけて。
学びを生かして飛躍の年に
年末ラリーを期待していましたが、まさかの「実質利上げ」でマーケットは大きく下落してしまいました。
そんな中で目立った動きがあったのは、不幸中の幸いでした。レーザーテックへの売買集中、メガバンクだけでなく地銀を含めた銀行株への注目。そして、学びのある動きとしては、ロックアップ解除の受給悪化で株価がどうなるか、ということを体感できました。
マーケットは悪かったかもしれませんが、それでもたくさんの学びがあった1か月でした。この学びを生かして、2023年もがんばるぞ!
それでは皆さん、良いお年をお迎えください(大晦日に執筆しています)。2023年は卯年。ぴょんぴょん飛び跳ねて飛躍していきましょう!
そうそう、年間ランキングも近々まとめますので、ぜひ見てくださいね。
(株の学校ドットコム講師・窪田 剛)